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ぶた
これはウサギのお話です。
うーさぎうさぎ
何見てはねる
私の名前は櫟野楓。
ちょっと上向きの鼻に、白い肌でぶたと呼ばれている。
でも勘違いはしないでほしいのだ。
みんなは別に私をいじめているわけじゃない、
親しんで呼んでいるだけ。
そりゃ年頃の女の子だから、ぶたって呼ばれるたびに傷つくの。
だから私、前、勇気を出して言ってみたの。
ねぇ、あたしをぶたって呼ぶの、やめてくれない?
みんなはきょとんとして、どうして?って聞いたわ。
親しみを込めて言っているのよ?
だって私も女の子だし、傷つくわ。
先生が重々しくうなづいて、
「そうだ、ぶただって女の子なんだから
ぶたをぶたと呼ぶのはしつれいだな」
それから私、かわいらしく「子豚チャン」と呼ばれるようになったわ。
そんな私が、去年の九月に、飼育係に選ばれたの。
信じられる?あのかわいらしい小兎や、子羊なんかを
さわれる、名誉ある飼育係にこの私が選ばれたのよ?
私、有頂天になって、飼育ごやの周りを、ほうきではきながらおどったわ。
子豚チャンのダンス、としてみんなに知れ渡ったそのダンスは実際ちょっとしたもんだったわ。
小屋に入ると子羊や子兎はぷるぷるふるえながら私を見たわ。
そのちっちゃな瞳がきらっきらに光ってとってもかわいらしかった。
私、感極まってこういったの。
「怯えなくて良いのよ、ちっちゃなちっちゃな赤ちゃんたち、
これからは私が絶対守ってあげる。」
「うそつき!!」
「そうだ、うそつきだっ」
子兎ちゃんたちが叫びだした。
私、驚いてしまって悲しくなったわ。
「ひどいわ、どうしてウソだと思うの?
私はあなたたちを絶対傷つけたりなんかしないのに」
「ウソだ!!人間はうそつきだ!!」
「そうだ!信じちゃいけないんだ!!」
「まぁまて」
のっそりと奥から子兎、いえ、大兎が這い出てきたわ。
黒々とした毛並みと艶艶の耳!
私この兎がボスだってすぐ分かったわ。
「この人間は、人間たちに子豚と呼ばれている。
子豚なら私たちの仲間ではないか?」
「し。しかし」
若い子兎が口をもごもごさせながら言ったわ。
「こやつは豚であって人間です、信用していいものか」
「聞けばよい」
厳かに、黒兎が言ったわ。
「汝、おまいは信用に値するものか?と」
「大丈夫よ、絶対に裏切らないわ」
「まだこっちが質問してないぞ!!」
ぶーぶーと子兎たちが言ったわ。
私はごめんなさいって気分になって首をたれたの。
「それでは」
これまた厳かに若い兎が言ったわ。
「汝、おまいは信用に値するものか?」
「はい」
私は勢い込んでうなづいた。
もう兎に嫌われたくなかったの。
兎達はしんとなったわ。
「よろしい」
黒兎は厳かに言った。
「こいつは信用に値するものだ。
話しても、いいだろう」
「しかし!」
まだ若い兎はごねていた。
「気にしないでくれ、人間よ、
私たちはか弱い兎であるからに、
用心しすぎる、と言うことはないのだ。
ところで私はおまいをなんと呼べば良いかな?
願わくば、子豚と呼ばせていただきたいのだが」
「もちろんよ、でも出来れば子豚にちゃんをつけて
子豚チャンって呼んでくれると嬉しいんだけど。
みんなそう言ってるし」
「分かった、子豚チャン、こっちへ来てもらえないかな、
話をしたいのだよ、私たちがなぜこんなに臆病になったか。
なぜこんなに、怯えているのか」
私は数匹の(どれも立派な耳を持った)若い兎とともに、
黒兎に連れられて、小屋の奥に行ったわ。
私、びっくりしちゃった。
こんなに小屋が広いなんて。
小屋の奥はこぢんまりした洞窟のような場所で、
干草が気持ちいいように敷きつめられていたわ。
黒兎は干草の真ん中のくぼみに座って、きゅうっと一言鳴いたわ。
若い兎たちが私を囲むように座る、
私もお行儀良く、干草に横座りしたわ。
「さて、話してしんぜよう。
私たちの過去を。
私たちがなぜ、人を憎むのかを。」
昔々まだ私たちが勇ましい鳥だった頃
知っているかね、お嬢ちゃん、
私たちは鳥だったんだよ、
それはそれは立派な耳で大空を自由にはばたいていたのだよ。
大空!なんてステキな響きだろう。
私たちは、サファイアのような青く澄んだ目をもっていた。
それは神様から頂いた大事な宝石で、夜でも昼でも
全てのものが良く見えた。
私たちは神様から、天子(誉れ高い天の子)と呼ばれていて、
地上に悪いものがいないか、見張るのが仕事だった。
悪いものを見かけたら、その耳でぴゅーっと神様のところまで
飛んでいき、こう告げるのだ。
「悪い奴がいました!こらしめてください!!」
私たちは幸せだったよ。
純白の毛皮をまとい、誇り高いその胸には1房の勲章が輝いていたっけ。
思えば、あのまま満足していればよかったのだ。
しかし・・・・。
黒兎は悲しげに首を振った。
生き物が全てそうであるように、若い兎達は変化を望まずにはいられなかった。
平穏を平穏と思わず、退屈だと思っていたのだ。
間違いだった!!いまさら気が付くとは・・・、
しかしあの頃、兎達はできたてで、みんな若かったのだ。
ある日、若い兎の一羽が、ふらふらと森をさまよい飛んでいた。
彼はつまらないなーと思っていた。
どうにもこうにもつまらない、神様たちは悪いことがないとひまだってことを理解してくれないし。
悪いことを望むほどぼくは悪じゃあないけれど、
いやんなっちゃうほどつまらないな。
そこに、小さな人間が、声をかけたのだ。
『はろー、そこの天子』
『はろー、人間、いい天気だね』
『つまらなそうにそんなことを言う奴は天子ぐらいなもんだろうな』
くすくすと人間は笑った。
その時、兎は気が付いたのだ。
その人間の美しさに。
蜂蜜色の巻き毛は太陽のように煌いて、彼女の白い桃のような頬を彩っていた。
その眼は深い緑色で、湖のように澄んでいた。
ぷっくりした瑞々しい唇はピンク色で彼女が息づくたびに、
ぷりゅんぷりゅんとゆれていた。
『ね、私についてこない?』
彼女は言った。
兎はどきどきして、まぎまぎした。
耳がぷるぷるゆって、落ちそうになったほどだ。
『あなたに助けて欲しいことがあるの』
『何か困っているのかい?』
『ずいぶんね、困っているわ』
彼女は悲しげに顔を伏せた。
その目が悲しげにかげるのを見て、兎はどうにもこうにも
この子を助けなきゃならない、と思った。
『どっちに行けばいいんだい?』
『こっちだよ』
彼女ははだしで駆け出した。
そのふくらはぎの白さに兎は鼻血が出そうになった。
彼女に必至で耳を回してついていったよ。
彼女が案内した場所は、開けた空き地だった。
兎はそこに、真っ白な馬が1頭いるのを見た。
『あの馬が悪者なの』
彼女は言った。ぷっくりしたピンクで。
『そうは見えないけど・・・』
馬の毛並みは美しく、白く輝く体躯は自信にあふれて輝いていた。
彼女に負けず美しいあの生物が、悪いものだとは思えなかった。
『私を疑うの?私、あいつに脅されているのよ、
花嫁になれって、あたしはとってもイヤだったのに』
そこで引き返しておけばよかったのだ。
しかし兎はもう、彼女にめろめろだったのだ。
『よし、それは悪い奴だな、神様に言っておこう』
『ダメよ!今なんとかしてくれないと、私、あと1分後にはあいつのものになってしまうわ!!無理やり・・・』
兎は彼女が無理やり手篭めにされる所を想像した。
また鼻血が出そうになった。
兎は実際すでにもう、彼女にぞっこんだったのだ。
『わかった、私が話をつけてこよう』
『ぶん殴って!!それだけでいいわ!それだけであいつもわかるわ!』
『分かった、ぶん殴ってくる』
私はがーーーーーっと勢いこんで羽を回した。
馬が驚いたように飛び出してきた私を見る。
『やい、悪いやつめ!!ぶん殴ってやる!!』
『なんだと、おまえは』
ぱしーん。
兎は馬に全てを言わせずに、その耳で馬をたたいた。
馬がぎょっとして、頬を抑える。
「ざまぁミロ、ゴット!!
てめぇの花嫁に誰がなるかよ!!」
彼女が叫んだ。そのまま走り出す、彼女。
『ゴット(神)だって!?』
『天子、おまえは私に何をしてくれたのだ!!!』
馬がどーんと姿を解いた、そこにはまぎれもない、神がいたのだ!!
『おまえはもう飛ぶことは許されぬ、
おまえはもう、天子ではない、
おまえはもう、私の子ではない、
地に落ちろ!兎、地におちろ!!』
『か・かみさまぁあああー』
黒い渦が兎を飲み込んだ。
空を飛んでいた兎達全部を飲み込んだ。
ぐるぐる回って、ぐるぐる回って、
気が付いたとき、私たちはその空き地に怯えて寄り添っていた。
飛び方は・・・飛び方は・・・忘れてしまっていた。
忘れさせられたのだ!!
もう、羽は羽ではなかった。
私たちは泣きに泣いた。
彼女に裏切られたことも、神の怒も、泣いて泣いて泣いて。
私たちの目は泣きはらして真っ赤になった。
これで私の話は終わりだ・・・。
それ以来、私たちは・・・、こうして悪のはこびる地で、
怯えながら暮らしているのだ。
はーっとため息をついて、黒兎は話を終えた。
私もはーっとため息をついた。
黒兎の話は重たくって、体にすいすいまとわりついた。
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うーさぎうさぎ
何見てはねる
私の名前は櫟野楓。
ちょっと上向きの鼻に、白い肌でぶたと呼ばれている。
でも勘違いはしないでほしいのだ。
みんなは別に私をいじめているわけじゃない、
親しんで呼んでいるだけ。
そりゃ年頃の女の子だから、ぶたって呼ばれるたびに傷つくの。
だから私、前、勇気を出して言ってみたの。
ねぇ、あたしをぶたって呼ぶの、やめてくれない?
みんなはきょとんとして、どうして?って聞いたわ。
親しみを込めて言っているのよ?
だって私も女の子だし、傷つくわ。
先生が重々しくうなづいて、
「そうだ、ぶただって女の子なんだから
ぶたをぶたと呼ぶのはしつれいだな」
それから私、かわいらしく「子豚チャン」と呼ばれるようになったわ。
そんな私が、去年の九月に、飼育係に選ばれたの。
信じられる?あのかわいらしい小兎や、子羊なんかを
さわれる、名誉ある飼育係にこの私が選ばれたのよ?
私、有頂天になって、飼育ごやの周りを、ほうきではきながらおどったわ。
子豚チャンのダンス、としてみんなに知れ渡ったそのダンスは実際ちょっとしたもんだったわ。
小屋に入ると子羊や子兎はぷるぷるふるえながら私を見たわ。
そのちっちゃな瞳がきらっきらに光ってとってもかわいらしかった。
私、感極まってこういったの。
「怯えなくて良いのよ、ちっちゃなちっちゃな赤ちゃんたち、
これからは私が絶対守ってあげる。」
「うそつき!!」
「そうだ、うそつきだっ」
子兎ちゃんたちが叫びだした。
私、驚いてしまって悲しくなったわ。
「ひどいわ、どうしてウソだと思うの?
私はあなたたちを絶対傷つけたりなんかしないのに」
「ウソだ!!人間はうそつきだ!!」
「そうだ!信じちゃいけないんだ!!」
「まぁまて」
のっそりと奥から子兎、いえ、大兎が這い出てきたわ。
黒々とした毛並みと艶艶の耳!
私この兎がボスだってすぐ分かったわ。
「この人間は、人間たちに子豚と呼ばれている。
子豚なら私たちの仲間ではないか?」
「し。しかし」
若い子兎が口をもごもごさせながら言ったわ。
「こやつは豚であって人間です、信用していいものか」
「聞けばよい」
厳かに、黒兎が言ったわ。
「汝、おまいは信用に値するものか?と」
「大丈夫よ、絶対に裏切らないわ」
「まだこっちが質問してないぞ!!」
ぶーぶーと子兎たちが言ったわ。
私はごめんなさいって気分になって首をたれたの。
「それでは」
これまた厳かに若い兎が言ったわ。
「汝、おまいは信用に値するものか?」
「はい」
私は勢い込んでうなづいた。
もう兎に嫌われたくなかったの。
兎達はしんとなったわ。
「よろしい」
黒兎は厳かに言った。
「こいつは信用に値するものだ。
話しても、いいだろう」
「しかし!」
まだ若い兎はごねていた。
「気にしないでくれ、人間よ、
私たちはか弱い兎であるからに、
用心しすぎる、と言うことはないのだ。
ところで私はおまいをなんと呼べば良いかな?
願わくば、子豚と呼ばせていただきたいのだが」
「もちろんよ、でも出来れば子豚にちゃんをつけて
子豚チャンって呼んでくれると嬉しいんだけど。
みんなそう言ってるし」
「分かった、子豚チャン、こっちへ来てもらえないかな、
話をしたいのだよ、私たちがなぜこんなに臆病になったか。
なぜこんなに、怯えているのか」
私は数匹の(どれも立派な耳を持った)若い兎とともに、
黒兎に連れられて、小屋の奥に行ったわ。
私、びっくりしちゃった。
こんなに小屋が広いなんて。
小屋の奥はこぢんまりした洞窟のような場所で、
干草が気持ちいいように敷きつめられていたわ。
黒兎は干草の真ん中のくぼみに座って、きゅうっと一言鳴いたわ。
若い兎たちが私を囲むように座る、
私もお行儀良く、干草に横座りしたわ。
「さて、話してしんぜよう。
私たちの過去を。
私たちがなぜ、人を憎むのかを。」
昔々まだ私たちが勇ましい鳥だった頃
知っているかね、お嬢ちゃん、
私たちは鳥だったんだよ、
それはそれは立派な耳で大空を自由にはばたいていたのだよ。
大空!なんてステキな響きだろう。
私たちは、サファイアのような青く澄んだ目をもっていた。
それは神様から頂いた大事な宝石で、夜でも昼でも
全てのものが良く見えた。
私たちは神様から、天子(誉れ高い天の子)と呼ばれていて、
地上に悪いものがいないか、見張るのが仕事だった。
悪いものを見かけたら、その耳でぴゅーっと神様のところまで
飛んでいき、こう告げるのだ。
「悪い奴がいました!こらしめてください!!」
私たちは幸せだったよ。
純白の毛皮をまとい、誇り高いその胸には1房の勲章が輝いていたっけ。
思えば、あのまま満足していればよかったのだ。
しかし・・・・。
黒兎は悲しげに首を振った。
生き物が全てそうであるように、若い兎達は変化を望まずにはいられなかった。
平穏を平穏と思わず、退屈だと思っていたのだ。
間違いだった!!いまさら気が付くとは・・・、
しかしあの頃、兎達はできたてで、みんな若かったのだ。
ある日、若い兎の一羽が、ふらふらと森をさまよい飛んでいた。
彼はつまらないなーと思っていた。
どうにもこうにもつまらない、神様たちは悪いことがないとひまだってことを理解してくれないし。
悪いことを望むほどぼくは悪じゃあないけれど、
いやんなっちゃうほどつまらないな。
そこに、小さな人間が、声をかけたのだ。
『はろー、そこの天子』
『はろー、人間、いい天気だね』
『つまらなそうにそんなことを言う奴は天子ぐらいなもんだろうな』
くすくすと人間は笑った。
その時、兎は気が付いたのだ。
その人間の美しさに。
蜂蜜色の巻き毛は太陽のように煌いて、彼女の白い桃のような頬を彩っていた。
その眼は深い緑色で、湖のように澄んでいた。
ぷっくりした瑞々しい唇はピンク色で彼女が息づくたびに、
ぷりゅんぷりゅんとゆれていた。
『ね、私についてこない?』
彼女は言った。
兎はどきどきして、まぎまぎした。
耳がぷるぷるゆって、落ちそうになったほどだ。
『あなたに助けて欲しいことがあるの』
『何か困っているのかい?』
『ずいぶんね、困っているわ』
彼女は悲しげに顔を伏せた。
その目が悲しげにかげるのを見て、兎はどうにもこうにも
この子を助けなきゃならない、と思った。
『どっちに行けばいいんだい?』
『こっちだよ』
彼女ははだしで駆け出した。
そのふくらはぎの白さに兎は鼻血が出そうになった。
彼女に必至で耳を回してついていったよ。
彼女が案内した場所は、開けた空き地だった。
兎はそこに、真っ白な馬が1頭いるのを見た。
『あの馬が悪者なの』
彼女は言った。ぷっくりしたピンクで。
『そうは見えないけど・・・』
馬の毛並みは美しく、白く輝く体躯は自信にあふれて輝いていた。
彼女に負けず美しいあの生物が、悪いものだとは思えなかった。
『私を疑うの?私、あいつに脅されているのよ、
花嫁になれって、あたしはとってもイヤだったのに』
そこで引き返しておけばよかったのだ。
しかし兎はもう、彼女にめろめろだったのだ。
『よし、それは悪い奴だな、神様に言っておこう』
『ダメよ!今なんとかしてくれないと、私、あと1分後にはあいつのものになってしまうわ!!無理やり・・・』
兎は彼女が無理やり手篭めにされる所を想像した。
また鼻血が出そうになった。
兎は実際すでにもう、彼女にぞっこんだったのだ。
『わかった、私が話をつけてこよう』
『ぶん殴って!!それだけでいいわ!それだけであいつもわかるわ!』
『分かった、ぶん殴ってくる』
私はがーーーーーっと勢いこんで羽を回した。
馬が驚いたように飛び出してきた私を見る。
『やい、悪いやつめ!!ぶん殴ってやる!!』
『なんだと、おまえは』
ぱしーん。
兎は馬に全てを言わせずに、その耳で馬をたたいた。
馬がぎょっとして、頬を抑える。
「ざまぁミロ、ゴット!!
てめぇの花嫁に誰がなるかよ!!」
彼女が叫んだ。そのまま走り出す、彼女。
『ゴット(神)だって!?』
『天子、おまえは私に何をしてくれたのだ!!!』
馬がどーんと姿を解いた、そこにはまぎれもない、神がいたのだ!!
『おまえはもう飛ぶことは許されぬ、
おまえはもう、天子ではない、
おまえはもう、私の子ではない、
地に落ちろ!兎、地におちろ!!』
『か・かみさまぁあああー』
黒い渦が兎を飲み込んだ。
空を飛んでいた兎達全部を飲み込んだ。
ぐるぐる回って、ぐるぐる回って、
気が付いたとき、私たちはその空き地に怯えて寄り添っていた。
飛び方は・・・飛び方は・・・忘れてしまっていた。
忘れさせられたのだ!!
もう、羽は羽ではなかった。
私たちは泣きに泣いた。
彼女に裏切られたことも、神の怒も、泣いて泣いて泣いて。
私たちの目は泣きはらして真っ赤になった。
これで私の話は終わりだ・・・。
それ以来、私たちは・・・、こうして悪のはこびる地で、
怯えながら暮らしているのだ。
はーっとため息をついて、黒兎は話を終えた。
私もはーっとため息をついた。
黒兎の話は重たくって、体にすいすいまとわりついた。