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亀の中に。
空に月がかかるころ、
僕はお母さんに内緒でこっそりと海を泳いだ。
海は冷たく刺すように痛く、ちっともやさしさなんて感じられなかった。
海の月がゆらゆらと、僕を金色に照らした。
海がめが七色の虹を上げて月へ飛んでいく。
海は僕を好きなのかしら、
僕は海の表面をなでるようにたたいて
その弾力を確かめた。
「おおーい、くすぐったいぞぉ」海がいった。
僕は海がめが上っていった月を目指して海を泳いだ。
水はねっとりと冷たく
僕の皮膚を切り裂きながら僕のあったかい血潮を吸い込もうとしている。
海は寂しいのかしら。
僕のあったかさが海にとって大事なものでありますように。
僕は海を泳いだ。
風がそよとも吹かない一日だった。
僕は海が「どうして海になってしまったのか」と考えながら海を泳いだ。
遠くのほうでやしの木が実をぼろぼろ落として
嘆きにないている。
亀の雄たけびが金色の月からたゆたう。
海は穏やかで冷たかった。
まったくもってそれは残酷なことだった。
僕は海が海になってしまったことを考えながら海を泳いだ。
僕って人間は
どうして海が僕を傷つけるだけだとわかっているのに
海に呼ばれれば泳いでしまうのだろうか。
それは海の魅力だった。
ちょっとした魔力のようなものだった。
だって僕は海からきたんだもの。
僕の海。海の僕。
亀の鳴き声目指して僕は泳ぐ。
海が見捨ててしまった亀は今でも海を愛してるのかしら。
いつか僕も海を捨てるだろう。
いつか海も僕を捨てるだろう。
それでも僕は海を捨てきれないだろう。
魂の右半分が僕と海をつないでる。
「だれだって海の子なんだ」僕は泳ぐ。
「おおおおおーい、いくきかぁあああい」
海の悲しい悲鳴が響く。
「いくきだよぉおおおお」
金色の月がああ、もうすぐそばにある。
これからは金の海で僕は泳ぐんだろうか。
それは砂でできてるんだろうか。
ちょっと早く来てしまった海の嘆きに
遠いぃ遠いいいやしのみが、その身を投げてキッスした。
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僕はお母さんに内緒でこっそりと海を泳いだ。
海は冷たく刺すように痛く、ちっともやさしさなんて感じられなかった。
海の月がゆらゆらと、僕を金色に照らした。
海がめが七色の虹を上げて月へ飛んでいく。
海は僕を好きなのかしら、
僕は海の表面をなでるようにたたいて
その弾力を確かめた。
「おおーい、くすぐったいぞぉ」海がいった。
僕は海がめが上っていった月を目指して海を泳いだ。
水はねっとりと冷たく
僕の皮膚を切り裂きながら僕のあったかい血潮を吸い込もうとしている。
海は寂しいのかしら。
僕のあったかさが海にとって大事なものでありますように。
僕は海を泳いだ。
風がそよとも吹かない一日だった。
僕は海が「どうして海になってしまったのか」と考えながら海を泳いだ。
遠くのほうでやしの木が実をぼろぼろ落として
嘆きにないている。
亀の雄たけびが金色の月からたゆたう。
海は穏やかで冷たかった。
まったくもってそれは残酷なことだった。
僕は海が海になってしまったことを考えながら海を泳いだ。
僕って人間は
どうして海が僕を傷つけるだけだとわかっているのに
海に呼ばれれば泳いでしまうのだろうか。
それは海の魅力だった。
ちょっとした魔力のようなものだった。
だって僕は海からきたんだもの。
僕の海。海の僕。
亀の鳴き声目指して僕は泳ぐ。
海が見捨ててしまった亀は今でも海を愛してるのかしら。
いつか僕も海を捨てるだろう。
いつか海も僕を捨てるだろう。
それでも僕は海を捨てきれないだろう。
魂の右半分が僕と海をつないでる。
「だれだって海の子なんだ」僕は泳ぐ。
「おおおおおーい、いくきかぁあああい」
海の悲しい悲鳴が響く。
「いくきだよぉおおおお」
金色の月がああ、もうすぐそばにある。
これからは金の海で僕は泳ぐんだろうか。
それは砂でできてるんだろうか。
ちょっと早く来てしまった海の嘆きに
遠いぃ遠いいいやしのみが、その身を投げてキッスした。