くまだった

怒らせないように
起こさないように
くまを撫でる

私は熊がかり

くまが怖いというとママは笑う
くまが怖いというとパパは笑う

何を言っているんだ、甘ったれるな、
世の中はそんなもんじゃないぞ、

そしてもっと怖いことの話をする
そして私はもっとおびえる

熊が起きるとひっかかれる
胸がえぐられて血が出たりする
人形だから、生きている
人間だったら、死んでいる

私は人形

夜中になって、私は泣く
少ししょっぱい、涙が出る
なんでかは分からない
ばれちゃいけないから、隠れている

起きているときはそれを見て、熊はぐぐっと鳴く
ぐぐっと鳴いて、私を触る
私はくしゃくしゃになる
熊の刺が痛すぎて、くしゃくしゃになる

ある日星を見た
真っ青な星だった
銀色の星だった
南のほうから北のほうまで
尾を描いて、流れていった
私は悲鳴を上げた

熊に寄りかかってさめざめ泣いた
熊は決して起きなかった
あんたが私を愛したいのは知っている
あんたが私を傷つけるしかなくて
苦しんでいる
でも私だってあんたを愛することはできない

流れていく星のように
星のように

さめざめ泣いた

起きたらくまはいなかった
さようなら、もっと気の合うひとおところへいきまじゅ
熊語でそう書いてあった

パパは怒ったこなごなに
ママは怒ったこなごなに
私は何度も叩かれた

心のそこからほっとした

もうとっても時がたった
ママは死んだ
パパも死んだ

熊のことを思い出した

あれでよかったと想っていた
だけどあんたは苦しんでいた
だけどあんたはほんとに私が好きだった
私はただ傷ついていた

また星が、
星が
飛んだ
青く
飛んだ

涙が出た
ぜんぜん分からなかったけど

会おうと想った
熊に会おうと
あのときのことを
もうちょっと話そうと

どうなるかも
どうしてなのかも
意味とか理由とか
そんなちっぽけなこと、
ぜんぜん分からないよ

熊が
苦しんでた
だから行く

それじゃだめなの。